Round1 Ito Kouei vs. Kawasaki Daisuke

By Shimizu Naoki


「デッキじゃない デックだ」
普段はカバレッジライターとして活躍するのは川崎大輔。いつもは取材する立場だが今回は取材される立場としてフィーチャーエリアにご登場いただいた。「デッキはどんなですか」という筆者の質問に対し上記のような意味不明な答えをしてくれた。そんな和やかな雰囲気のなかシャッフルは進む。


   日本語ヲタク、川崎大輔 
対するはこの夏の高校選手権を制した筑波大附属駒場高校のエース、伊藤光英である。
「ニートは負けない」というこれまた意味不明ながらも力強いコメントを頂いた。彼は生粋のボロス使いとして、今回もボロスをこの都選手権に持ち込んできた。
一方川崎の「デック」は黒のクリーチャーを中心とし、《不吉の月/Bad Moon(TSB)》と火力で後押しするラクドスビート。だが普通のラクドスでは面白くないのでなにやら秘密兵器が搭載されているとのことで。
互いに攻撃的なギルド。高校選手権の夏は終わってしまったがまだまだアツい火力の撃ち合いが期待できそうだ。



Game 1
ダイスロールの結果、先行はボロス伊藤。
土地が《聖なる鋳造所/Sacred Foundry(RAV)》のみだが《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(9ED)》《裂け目の稲妻/Rift Bolt(TSP)》は出せる、というハンドを少考ののちにマリガン。「後手だったらキープ」だったらしい。1回のマリガン後、納得のいくハンドを手に入れたようだ。
一方のラクドス川崎はマリガンなし。
先攻のボロス伊藤は《平地/Plains(TSP)》セットから《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(9ED)》とロケットスタート。《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda(CHK)》無き後、ボロスの1ターン目としては最高だ。
それに対するラクドス川崎の答えは・・・

《血の墓所/Blood Crypt(DIS)》から《大いなるガルガドン/Greater Gargadon(TSP)》を待機!!!

いきなり秘密兵器のご降臨、いや待機に驚きの色を隠せていないボロス伊藤。
当然、《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》も入っているらしい。ラクドス川崎には悪いが是非このフィーチャーテーブルで10点ルーズライフする光景を見てみたいものだ。
返しの行動は《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》。赤いデッキにとっては対処が非常に難しい、タイムスパイラル環境での白のエースクリーチャーだ。黒い除去呪文を持ち合わせていないラクドス川崎は悔しそうに《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(9ED)》を《炎の印章/Seal of Fire(DIS)》で除去。
次のターン、ボロス伊藤は「神のドロー」といいつつカードを引き、《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》で攻撃を仕掛けるも、別段「神のドロー」はできたわけでもないようで、土地を置くのみでターンを終える。
一方の川崎はなかなかクリーチャーを出すことが出来ない。時が進んでいる《大いなるガルガドン/Greater Gargadon(TSP)》もまだ召喚には程遠い。《不吉の月/Bad Moon(TSB)》を置くのみでターンを返した。
ここでボロス伊藤は更に《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》を追加。これにはラクドス川崎も焦りの表情を隠せない。何しろ手札には《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》《黒焦げ/Char(RAV)》などの火力が溜まってしまっているのだ。
「なんだよプリーストって・・・」
と愚痴もこぼれる。ドローをしてみるも、やはり明確な解答を引くことが出来ない。
ボロス伊藤は《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》2体で攻撃すると、《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》をラクドス川崎自身へ。ライフが5となったラクドス川崎は完全に射程圏内に入った。ここでなんとラクドス川崎は《黒焦げ/Char(RAV)》をボロス伊藤へキャスト。しかしボロス伊藤のライフはまだまだある。返すターンに《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》をどうしようもできないラクドス川崎は投了を余儀なくされた。
「マリガンだった・・・」と悲しげな断末魔を残していた。


伊藤 1-0 川崎

  お勧めの一枚  
サイドボード中、川崎から「取材されるのもいいもんだ」という発言を受けた。まさかこれからはプレイヤーとして活躍するという気合の現われなのか!?
一方伊藤は「テーブル広いー。人がごみのようだ(笑)」
今回の人のとんでもない多さを象徴するような発言を。

サイドボーディングに注目してみると、川崎はなんと《大いなるガルガドン/Greater Gargadon(TSP)》をサイドアウト・・・当たり前といっては当たり前なのだがなんともいえない寂しさも感じた。
これに加えて《黒焦げ/Char(RAV)》《センギアの従臣/Sengir Autocrat(TSB)》などをアウトし、《死の印/Deathmark(CSP)》《ネクラタル/Nekrataal(9ED)》といった除去を追加した。明らかに《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》を意識したサイドボーディングだ。
一方の伊藤は《黒焦げ/Char(RAV)》4枚などをサイドアウトし《名誉の道行き/Honorable Passage(TSB)》《崇拝/Worship(9ED)》を投入した。火力の撃ち合いでは《黒焦げ/Char(RAV)》はあまり有利にならない。その一方で相手の火力をわずか1白でそのまま跳ね返す《名誉の道行き/Honorable Passage(TSB)》は素晴らしいカードである。



Game 2 
ラクドス川崎は当然先攻を選択。
第1ターンは互いに《聖なる鋳造所/Sacred Foundry(RAV)》《血の墓所/Blood Crypt(DIS)》をタップインしてターンを終えた。
ラクドス川崎は《炎の印章/Seal of Fire(DIS)》を設置、さらに《ラクドスの肉儀場/Rakdos Carnarium(DIS)》でアドバンテージを稼ぐ。
ボロス伊藤は《聖なる鋳造所/Sacred Foundry(RAV)》のアンタップインから先ほどのゲームを決めた《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》を召喚する。
またも同じようにやられるわけにはいかないラクドス川崎、《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を召喚するとさらに《血の墓所/Blood Crypt(DIS)》から《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage(TSB)》を召喚。1点ダメージの発生源は黒であるので《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》は除去可能だ。しかしこれは返すターンに《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》によってご臨終。

だがボロス伊藤の土地が2枚で止まってしまった。ラクドス川崎の土地は順調に伸びており、これは痛い。
このマッチアップのキーともいえる《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》のめくりは《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk(9ED)》。3点のライフを失ったラクドス川崎は若干苦しいか。とはいってもアドバンテージは確実に手にしているわけで、《沼/Swamp(TSP)》を置くと《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》で攻撃しつつ、先ほど公開された《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk(9ED)》を出し、更に《死の印/Deathmark(CSP)》で《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》を除去した。

ここでボロス伊藤はしばらく悩んだ末、《平和な心/Pacifism(9ED)》を《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk(9ED)》にエンチャントした。《冥界の裏切り者/Nether Traitor(TSP)》の可能性がある以上、このクリーチャーは放置できないと考えたようだ。しかしまだ3枚目の土地をおくことは出来ない。次の《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》のめくりは《沼/Swamp(TSP)》。ラクドス川崎はテンポよく《冥界の裏切り者/Nether Traitor(TSP)》《ダウスィーの殺害者/Dauthi Slayer(TSB)》を追加、《ラクドスの肉儀場/Rakdos Carnarium(DIS)》から浮いたマナでマナバーンを1点うけつつ攻撃を加える。
返すターンでもボロス伊藤は土地を引くことが出来ない。このターンは何もせずにターンを返す。
そして公開される《沼/Swamp(TSP)》。2連続で「宇宙」を見せた《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》に対しボロス伊藤は渋い表情。ラクドス川崎はさらに《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage(TSB)》《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を追加、攻撃してターンを終える。終了時伊藤は《稲妻のらせん/Lightning Helix(RAV)》を本体に打ち込みライフを14に回復する。
ようやく《平地/Plains(TSP)》を引くことが出来たボロス伊藤は《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(9ED)》を召喚してターンを終了。
場では押しているものの、実はライフは負けているラクドス川崎は《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk(9ED)》の能力で《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を生け贄にするか少し悩むも、せっかく出したのだからと生け贄にはせずにそのまま自分のターンへ。
2体に増えた《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》、めくられたのは《沼/Swamp(TSP)》と《炎の印章/Seal of Fire(DIS)》だ。ルーズライフが1点にとどまったラクドス川崎は《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage(TSB)》の能力をライオンに起動。残ったクリーチャーの攻撃でボロス伊藤のライフは火力の射程圏内に。なんとか耐えるしかないボロス伊藤は《稲妻のらせん/Lightning Helix(RAV)》を本体へ。これでラクドス川崎のライフは4になった。
《宝石鉱山/Gemstone Mine(TSB)》を引いたボロス伊藤は《空騎士の軍団兵/Skyknight Legionnaire(RAV)》を召喚するものの攻撃はせず、《裂け目の稲妻/Rift Bolt(TSP)》を待機してターンを終えた。流石に死が見えるラクドス川崎は《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を1体《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk(9ED)》に食わせ、ライフルーズに耐える構え。
公開されたのは《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》。さらに通常ドローで《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》を引いたラクドス川崎は安堵の表情を見せる。もし《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を残していたら死んでた・・・と。
そして、《炎の印章/Seal of Fire(DIS)》によって《空騎士の軍団兵/Skyknight Legionnaire(RAV)》が除去され、総攻撃の後《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》の直撃を受けたボロス伊藤は1ターン差でゲームに敗れることとなった。


伊藤 1-1 川崎

「(《裂け目の稲妻/Rift Bolt(TSP)》が)《溶岩の撃ち込み/Lava Spike(CHK)》だったらなー。次事故るわけにはいかないなー」と入念なシャッフルをする伊藤。
あまりの除去の量に《崇拝/Worship(9ED)》は無意味とみたか、サイドアウトして《ロノムの一角獣/Ronom Unicorn(CSP)》を代わりに投入する。
一方川崎は《黒焦げ/Char(RAV)》2枚を戻し、《病に倒れたルサルカ/Plagued Rusalka(GPT)》《ネクラタル/Nekrataal(9ED)》をサイドアウト。

Game 3
《聖なる鋳造所/Sacred Foundry(RAV)》のみでターンを終える先攻のボロス伊藤に対し、《沼/Swamp(TSP)》から《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage(TSB)》を召喚するラクドス川崎。これにはボロス伊藤もかなり辛そうな表情を浮かべる。さては手札には《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》か。
やはり《平地/Plains(TSP)》を置くのみでターンを終了するボロス伊藤。ここに《冥界の裏切り者/Nether Traitor(TSP)》ともども襲い掛かる。
《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage(TSB)》をどうにかしなければならないボロス伊藤は引いてきた《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》でこれを焼殺。ラクドス川崎は《ダウスィーの殺害者/Dauthi Slayer(TSB)》召喚。ランドが止まってしまったが、相手の場が整う前に一気に畳み掛けたいところだ。
ところがこの場に激震が走る。「チャンス!」とボロス伊藤はこのマッチアップ初の《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GPT)》を召喚!なにしろ場にはシャドー持ちのクリーチャーしかいないのだ。これにはラクドス川崎も渋い表情。3点VS4点のクロックで、一気に攻守が逆転してしまった。
なんとかしたいラクドス川崎は引き続き《冥界の裏切り者/Nether Traitor(TSP)》《ダウスィーの殺害者/Dauthi Slayer(TSB)》で攻撃。《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GPT)》に対しては「お願いだからブロックさせて」と言わんばかりに《病に倒れたルサルカ/Plagued Rusalka(GPT)》を呼び、《炎の印章/Seal of Fire(DIS)》を設置する。
勿論このブロックを許すわけにはいかないボロス伊藤、《平和な心/Pacifism(9ED)》を《病に倒れたルサルカ/Plagued Rusalka(GPT)》にエンチャントし、更に4点のダメージを与える。そして先ほどまで手札に腐っていた《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》を召喚。

これ以上のクロックは許せないラクドス川崎は《病に倒れたルサルカ/Plagued Rusalka(GPT)》を《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》に起動、ようやく引いてきた《ラクドスの肉儀場/Rakdos Carnarium(DIS)》置いてターンを返す。だが《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GPT)》はどうしようもない。
《レオニンの空狩人/Leonin Skyhunter(9ED)》《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(9ED)》と追加したボロス伊藤は無慈悲にも《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GPT)》で実に12点目のダメージを与える。
ヒヨケムシに対する対処が・・・ 頭を抱えるラクドス川崎。「あー、間違えた!」と小さく叫ぶ。そう、前のターンに《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》を本体に撃っていれば、このターンにクリーチャーによる攻撃と《黒焦げ/Char(RAV)》で勝てたかもしれないのだ。
  容赦なき攻撃!        

とりあえずなんとか生き残らなければならないラクドス川崎は《火山の鎚/Volcanic Hammer(9ED)》を《レオニンの空狩人/Leonin Skyhunter(9ED)》を打ち込む。こうすれば相手が何もなければ次のターンに勝つことが出来る・・・が、ここでボロス伊藤の手札から零れ落ちたのは《名誉の道行き/Honorable Passage(TSB)》!!!
これによって完全に計算が狂ってしまったラクドス川崎は静かにカードを片付けた。
「手拍子でやりすぎましたね」
こんな捨て台詞を残してくれたが、川崎にはライターとしてだけでなくこれからも一人のマジックプレイヤーとして、期待したい。


伊藤 2-1 川崎

予想通り、《名誉の道行き/Honorable Passage(TSB)》はこのようなマッチアップでいぶし銀の活躍を見せた。書いてあることは地味なカードではあるが、ボロスなどのアグレッシブな白デッキを使っている人でまだこのカードを試していない方は是非試して欲しいカードである。

Result: 伊藤光英 Wins!